歯科医院は開業すれば安定と言われた時代もありましたが、競争激化や人口の減少、診療報酬の変動などで安定した経営を行うのが難しくなっています。厳しい環境が続く中で歯科医院の経営を維持するには、経営者としての的確な戦略が必須です。ここでは、多くの歯科医院が経営難に陥っている実態や原因、開業・経営を成功させるポイントなどを解説します。
株式会社 帝国データバンクが行った「歯科医院」の倒産・休廃業解散動向(2024年1~10月)調査によると、2024年の倒産や休廃業・解散の数は過去最多となる126件となっています。これまでも歯科医院の倒産数は年々増加の一途をたどっていましたが、2024年は10月までの段階で前年度を大きく上回る結果に。現代の医療市場において、歯科医院の経営がかなり難しい局面を迎えていることが伺えます。
歯科医院が経営難に陥っている原因としてまず考えられるのは、少子高齢化による患者の絶対数の減少です。歯科医院の数はコンビニよりも多いと言われるほど飽和状態にある一方で、患者の絶対数は減少していることから、地域内での競争が激化しています。また、歯科医師の高齢化や後継者不足なども、歯科医院の経営に深刻な影響を及ぼしている要因です。
歯科医院を経営するには、歯科治療の知識や技術のほかに、マーケティングやスタッフの育成などに関する幅広い知識・スキルも求められます。
できるなら院長は経営に専念して、治療は雇った歯科医師などに任せるのが理想です。ただ、個人開業の歯科医院だと院長が1人でこなしているケースも多く、経営に十分なリソースを割けていないことが経営難に陥る原因となっています。
少子高齢化で患者の絶対数が減少しているなかで歯科医院の数は増え続けており、患者の獲得競争がかなり激化しています。駅前などの便利な立地は競争が特に激しいため、安易に参入するのは危険です。事前に市場や診療圏調査をしっかり行っておかないと、集患できずに医院の継続が困難となり、倒産に追い込まれる恐れがあります。
競合の歯科医院との差別化を図るには、最新設備の導入やスタッフの育成が必要になってきます。ただ、テナントの利用料や詰め物に使用する金属の材料費が高くなっているなかで、設備やスタッフの育成にも投資するとなると、収益を出すのが難しい状況が続いてしまいます。保険診療だけを行っているクリニックだと、さらに経営が厳しくなってしまうでしょう。
歯科医院の数の増加によって、患者だけでなく、歯科衛生士などの人材を獲得するのも難しくなっています。優秀なスタッフを確保するには採用活動を積極的に行う必要がありますが、採用業務まで手が回らないというケースもあるでしょう。求人を掲載して待っていれば人材が集まるという時代ではないため、人材獲得のための対策を講じないと経営がどんどん厳しくなってしまいます。
経済の変動で物価が上昇すると高額な自由診療を選択する患者の数が少なくなるほか、感染症によって集患に影響が出る場合もあります。また、患者が歯科医院に求めるニーズも時代とともに変化しているため、その時々の状況に応じた臨機応変な経営対策が必要です。
歯科医療業界は患者獲得の競争が激化しているため、開業前に市場調査をしっかりと行うことが重要です。
市場調査を十分に行わずに競合の多い場所で開業した場合、ほかの歯科医院よりも診療内容や立地などの条件で優れていないと、集患するのは難しいでしょう。事前の調査で優位性や独自性で競合との差別化を図れるかどうかを確認し、開業場所を慎重に検討する必要があります。
患者獲得の競争が激化しているなかで経営を安定させるには、集患対策が重要です。
開業前に市場調査を行うのはもちろん、開業後も患者の接点となるホームページや広告などを戦略的に活用していく必要があります。特にインターネット検索で歯科医院の情報を収集する人が増えているため、ホームページは単なる情報発信の場ではなく、集患につながるツールとして重要性が高まっています。
患者がリピートするかしないかを判断する要素に、歯科衛生士と歯科助手の技術力・対応もあげられます。診療時間が長く柔軟で、立地条件が良かったとしても、スタッフの技術力が不足していると不安感や不信感を与えてしまい、ほかの歯科医院に患者が流れかねません。また、対応の悪さも患者が別の歯科医院に移る原因となり、さらに口コミで悪い評判が広まるとリピーターどころか新患を獲得するのも難しくなるので注意が必要です。
歯科医院を経営するには、歯科診療のサポートを行う歯科衛生士と歯科助手の存在が不可欠です。離職率が高いと経営難に陥る原因になるほか、治療や接遇の質が落ちてしまうことも。離職につながる原因として多いのは、職場環境や待遇などに関する不満です。また、結婚や出産で離職を検討する人も多いため、離職防止のための対策が求められます。
歯科医院の開業・経営の成功は、開業前の準備にかかっています。開業資金を確保するのはもちろん、開業場所の選定や診療圏調査などを行い、経営難に陥らないように準備を進めていくことが重要です。
また、開業後は診療だけでなく、経営や集患にも十分なリソースを割くようにしましょう。どれだけ医師の腕やスタッフの質が良かったとしても、患者に自院の存在を知ってもらわないことには集患につながりません。集患のための投資として、ホームページの開設やWeb広告の活用、予約システムの導入などを検討する必要があります。
今や、歯科医院を探すときにまずインターネットで検索する人がほとんどです。どれだけ診療内容や立地に優れていても、検索しても見つからなければ候補にすら上がりません。ホームページは単なる情報掲載の場ではなく、医院の魅力を伝える「集患ツール」として戦略的に活用することが重要です。
まずは、診療内容・診療時間・アクセスなどの基本情報を見やすく掲載することが大前提。そのうえで、医院のコンセプトや強み、院内の雰囲気、スタッフの紹介、治療方針なども丁寧に伝えることで、初診の不安を取り除き、来院のきっかけをつくることができます。また、スマートフォンからの閲覧を意識した構成や、予約システムとの連携なども効果的です。
ホームページは一度作って終わりではなく、開業後も定期的に更新することが大切。患者との接点を育てていくことが、安定した集患・経営につながります。
「何となく地元で開業したい」「タイミングがきたから開業したい」という理由で動き出すと、開業後の方向性にブレが生じやすくなります。歯科医院の経営を成功させるには、自院の経営ビジョンや診療方針をあらかじめ明確にしておくことが重要です。
「どんな患者層をターゲットにしたいのか」「保険診療と自費診療のバランスはどうするのか」「地域の中でどのような立ち位置を目指すのか」など、考えるべき項目は多岐にわたります。
ビジョンが明確であれば、診療内容や設備投資、スタッフ教育、広報戦略なども一貫した方針で展開できるため、開業後のブレを防ぎやすくなります。
どれほど魅力的なコンセプトがあっても、地域のニーズと合っていなければ経営は成り立ちません。開業を検討するエリアで「どんな治療ニーズがあるか」「競合はどのような特徴を持っているか」「どんな年代の患者層が多いか」などを把握し、自院の方向性とすり合わせていく必要があります。
たとえば、高齢者が多い地域であれば、バリアフリー設計や訪問診療への対応が求められることも。反対にファミリー層が多い地域であれば、小児歯科やキッズスペースの設置などがポイントになります。こうした地域性に合った経営戦略は、安定した集患と患者満足度の向上に直結します。
開業・経営をすべて一人でこなそうとするのは現実的ではありません。資金調達、税務処理、人事労務、広告戦略など、専門的な分野については、開業支援に詳しいパートナーや専門家の力を借りることが成功への近道です。
たとえば、歯科専門の税理士や開業コンサルタントに相談すれば、融資の手続きや経営シミュレーション、スタッフ採用のアドバイスなども具体的に得られます。特に初めての開業では、見落としや誤算が起こりやすいため、複数の視点から助言をもらえる体制を整えることが大切です。
スタッフは医院の“顔”とも言える存在です。いくら院長が良い治療を提供していても、受付やアシスタントの対応に問題があると、患者の満足度は大きく下がってしまいます。技術研修だけでなく、スタッフが安心して働ける職場環境を整えることが、結果として患者満足度やスタッフの定着率にもつながります。
たとえば、柔軟なシフト対応や適切な労働時間の管理、スタッフ同士の連携が取りやすい環境づくりなどが挙げられます。開業前から「どんな医院をつくっていきたいか」をスタッフと共有し、信頼関係を築いていくことが、安定した経営の土台となります。
開業後に「思ったより利益が出ない」「毎月の資金繰りが不安」というケースも少なくありません。こうした状況を避けるには、単に売上を見るだけでなく、損益分岐点やキャッシュフローなど、経営数字を把握することが重要です。
たとえば、毎月どれだけの患者数・診療単価があれば黒字になるのか、スタッフの人件費や設備投資にどの程度回しても大丈夫かなど、数値に基づいて経営判断ができるようになると、経営上のリスクを早めに察知できるようになります。必要に応じて、税理士や経営コンサルタントと連携するのも選択肢の一つです。
エリアマーケティングに自信!
ブランディングに自信!
安さと早さに自信!
※1「乗り換えなどの主要駅は出口ごとのエリア、矯正歯科専門医院様や専門サイトの際はターゲットによるため、弊社にて調査のうえ判断させていただきます。」との記載があります。参照元:イグザクト https://www.ex-act.jp/